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【父の思ひで…】(弘教寺だより平成21年7月号掲載)

 つい先日、ふと父親とのエピソードを思い出しました。ガンで余命三ヶ月の宣告を受けていた父親ですが、傍目からは気丈に振る舞っていました。療養ベッドの枕元にはたくさんのオーディオ機器、音楽・電気雑誌を並べ、寝たままでも好みのクラシック音楽が自由に聴けるように工夫しておりました。趣味で音響機器を自作していたこともあり、笑いながら「死ぬのは仕方ないが、なんとかこの脳みそだけは保存出来ないものだろうか」と漏らしたのです。正直私は「そこまでの頭脳かどうかは…ちょっと思い上がってるな~」と感じました。
 この出来事を思い出したきっかけは、実は私が子供の将来を考えたとき、私もいずれ死ぬのだし、そうなれば自分の思いも伝えられなくなる。ならば「なんとかこの脳だけでも残せないものかな」と感じたからでした。…父が脳みそを残したいと発言した裏に、命終後も家族とずっと関わっていたい、いや素直に「もっと生きていたい」という気持ちが隠されていたのではないかと、今頃思うようになりました。
 取り乱すこと無く、静かに今生の命終わっていった一住職でした。早いもので今年の冬に17回忌を迎えます。

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